京急の800形が可愛すぎてやばい。
夏の夕方ド順光で白が映える(仲木戸)
首都圏の大手私鉄の一つ、京浜急行(以下「京急」)は鉄道ファンの中でも特に人気があるようだ。ぼくはもともと京王線沿線で暮らしていたのだけど、数年前に友人が京急沿線に引っ越してから頻繁に乗るようになり、すっかりその魅力にとりつかれてしまった。
特に800形という車両の可愛さに、すっかりメロメロなのだ。
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◆800形が可愛すぎる
京急の電車には「快特」という種別がある。品川を出たら、次は京急蒲田、その次が京急川崎、横浜……、主要な駅だけ停まる速達性に加えて、ラッシュ時を除けば「2100形」という二人がけシートがズラリと並ぶ特別な車両を使って運用される、フラッグシップである。
しかし、今回ぼくが取り上げるのは「800形」という電車である。
この電車が、ものすごく、可愛いのだ。
◆800形は顔が可愛い
発車を待つ800形(京急蒲田)
これが800形である。いや、800形ちゃんである。
まるみを帯びた顔の、おでこに前照灯。
京急のイメージカラーである赤を纏いながら、額縁型に白を配して、暑苦しさは全くない。
運転席の窓も大きくて、視界良好。
そして裾に二つあるテールランプ。
800形ちゃんは1978年生まれ。40年近く前とは思えない、可愛らしいデザインではないか。
詳しくないのであまり言うべきではないと思うんだけど、「ハッカドール3号」に似てはいないだろうか、いや、色ではなく、顔立ちが……。
これ言うんじゃなかったな、共感されたことがないんだ。
◆800形ちゃんはドアが可愛い
800形ちゃんは首都圏の通勤電車で一部の例外を除き「唯一」の装備を持っている。
それが、この「片開きドア」である。
あなたがふだん乗ってる通勤電車のドアを思い浮かべてほしい。真ん中から左右にパカッと開く「両開きドア」ではないだろうか?
この「片開きドア」は、はっきり言ってしまえば古い。ラッシュ時には一刻も早くドアを閉めて発車してしまいたいところ、ドアの開閉に両開きドアより時間がかかってしまう。だもので、現在ほとんどすべての通勤電車は両開きドアを採用している(江ノ電など例外もあります)
しかるに1978年生まれの800形ちゃんは片開きドアを備え、現在も現役の通勤電車として活躍しているのである。
窓とドア窓のバランスも絶妙でしょう。あと椅子のカバーがブルーなのもいいよね〜(多分京急川崎付近)
◆800形ちゃんはスペシャリスト可愛い
通過待ちをする800形ちゃんの後ろ斜め45度(生麦)
800形ちゃんは現在(ダイヤの乱れなどが起こらない限り)「地上線の普通列車専用」で運用されている。
これはどういう意味かと言うと、「品川〜京急蒲田〜金沢八景〜新逗子・浦賀・京急久里浜」の区間を各駅停車で走る電車にしか使われないということ。京急蒲田から羽田空港に向かう空港線は途中駅にホームドアが設置されて以来、ドアの数が他の車両と違う800形ちゃんは入れなくなってしまったのだ(それ以前は羽田空港の地下駅に出入りする800形ちゃんの急行はあったし、更に言えば羽田空港の地下まで京急が乗り入れるようになる以前は京急蒲田と羽田空港旧駅の間を800形ちゃんが往復していた)
また正面に非常用出口が設置されていないので地下鉄浅草線との接続駅である泉岳寺にも入れない。また京急川崎から枝分かれする大師線にも、4両編成までしか入れないため、6両編成で一組の800形はやはり入れないし、京急久里浜から先、終点三崎口までの区間も多分現在は足を踏み入れてはいないはずだ。
しかし、800形ちゃんはその仕事のスペシャリストなのだ。
起動加速度3.5km/h/sという加速性能を備えている800形ちゃんは駅を出るなり素早く最高速度まで引っ張ると、すぐさま減速して次の駅へと滑り込む。短距離の加速→減速が必要とされる普通列車には、加速に時間を要する他の車両よりも適しているのだ。
可愛い顔してハイスペックのスペシャリスト、もはやこれは萌えの塊と言ってしまっていいのでは。
◆復刻800形ちゃんもとても可愛い
もちろんノーマル800形ちゃんも可愛い(日ノ出町にて)
現在は赤いボディに白い細帯というサイドビューの800形ちゃんだが、デビュー当時は窓周りを白く塗った鮮烈なカラーリングであった。
しかし800形ちゃんのデビューから4年後に登場した、「快特専用車両」である2000形が同様のカラーリングで登場すると、この塗り分けは快特専用車の代名詞となり、800形ちゃんは在来車両と同じ、現行の「赤地白帯」に塗色変更が施されてしまった。
しかし時は流れ2016年。かつて「快特専用」だった窓周り白のカラーリングが、いつしか後発の電車に当たり前のように施されるようになったのみならず、「快特専用」から退いた2000形に復刻企画として窓周り白カラーリングがなされるようになっていた中、とうとう800形ちゃんにもあのデビュー当時の晴れ姿を披露する時がやって来たのだ。
これが2000形の復刻塗装(仲木戸)
顔は以前と変わらず美白の800形ちゃん、サイドビューもビビッドな赤白ツートンカラーリングとなって、明るく軽やかで爽やか!
春先にはキャンペーンで「京急ラブトレイン」車両としてラッピングされていました。可愛すぎる。
「ラブリー」以外の言葉が思いつかない(日ノ出町)
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◆残り時間は短くても
かように愛らしさの塊のような800形ちゃん、しかし既に製造された車両の半分は廃車されてしまっている。デビューから40年、というのは人間で言ったらそろそろリタイアという時期なのである。
しかしまだまだ京急の普通列車で自慢のスプリント能力を披露している800形に乗ることは可能! この記事を読んでくれた皆さんは、是非とも彼がまだ元気でいるうちに強烈な加速性能とフォルムからほとばしる愛らしさを味わいに、京急沿線へと足を運んでみてはいかがでしょうか。